組合質疑応答集
 Q−15 持分の払い戻しに関する問題
Q−15−(1) 持分払い戻し方法変更のための定款変更の議決方法について
Q.  持分全額払戻制をとる組合が、出資限度の払戻方法に定款変更する場合は、組合員にあっては既得権の放棄を意味するので、総会における定款変更決議とは別に組合員全員の同意が必要ではないか?
A.  持分払戻方法に関する定款変更については、中協法第53条による特別議決をもって足り、特に組合員全員の同意は要しないものと解する。
 すなわち、中協法第53条において定款変更は特別議決によること、また持分払戻しに関して同法第20条に「ー定款の定めるところによりー全部又は一部の払戻しを請求ー」と規定するだけであり、中協法上組合員全員の同意を要する規定がないので、これが法律上明文の規定がないことを根拠として、通常の定款変更の手続きで足るものと解する。なお、持分については、既得権たる財産権と解する見解のほか、脱退等により現実化する潜在的な期待権とする見解もあるので、本件については、総組合員の同意を得ることは好ましいことではあるが、現行法上は法53条の特別議決をもって足りるとする見解は中小企業庁においても採用しているものである。  (59-62)
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Q−15−(2) 脱退者に対する持分の分割払戻しについて
Q. 多額の借入金、出資金等によって固定資産を取得している工場団地協同組合等において、組合員が脱退した場合、脱退者の持分を全額一時に払い戻すことは組合の資金繰りがつかず組合運営に支障をきたすことが考えられる。 そこで、定款変更するに当たり次の点について、ご教示願いたい。(1) 持分の払い戻しを年賦払いとすることの定款変更の適否について。(2) 適当である場合の年賦払いの期間はどの程度が適当であるか?(3) 定款変更案として次のような定め方は適当であるか?
 事業協同組合定款例第14条に相当する規定に次の1項を加える。
案の1「2 前項の払い戻しの期限は、脱退した事業年度の決算確定後○年以内の年賦払いとするものとする。ただし、年賦払いによる利息は支払わないものとする。」
案の2「2前項の払い戻しは、年賦払いとし、その期限は、総会の定めによるものとする。ただし、年賦払いによる利息は支払わないものとする。」 
A.  持分の払い戻しの取扱いについては、昭和46年1月6日付45企庁第2,048号及び昭和46年4月8日付46企庁第534号で通知したとおり、持分を一時に全額支払うことが組合の事業運営に重大な支障を来す場合においては定款で定めれば、その一部に限り(例えば出資額を限度として)払い戻すことができる。持ち分の全額払い戻しの場合も同様の理由から定款上分割払いを規定することは可能と考える。
 しかし、分割払いによって不当に脱退が制限されるべきではなく、1回の払戻金額、賦払期間が合理的に定められる必要がある。この場合、どの程度までの分割払いが合理的かは具体的事情に即して判断されるべきものと考えるが、中協法上出資払込みにつき分割払いの際、第1回の払込金額は、出資1口の金額の4分の1以上としていること(第29条第2項)から第1回払戻額が出資額の4分の1以上であれば合理的といい得るものと考える。ただし、分割払いにより脱退を不当に制限しないという趣旨から3年賦払いの場合、一般的水準の金利を支払うことが適当と考える。
 なお、払戻の方法(1回の払戻額、賦払い期間等)は中協法第20条第1項の趣旨から具体的には定款で定めるべきものと考える。 (63-67)
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Q−15−(3) 持分払戻方法を変更した場合の新定款の効力について
Q.  脱退者に対する持分を全額払い戻す旨の定款規定を出資額限度に改めるための臨時総会が適法に開催され、決議が有効に成立し、当該事業年度にこの変更申請が認可された場合において、次の者に対する持分の払い戻しに関する定款の適用については、各々次のように解釈するが適当か?(1) 臨時総会で反対を唱え、容れられなかったため脱退を予告した組合員(解釈)
自由脱退の場合は、脱退を予告した組合員といえども事業年度の終了日までは、組合員たる地位を失っていないし、組合に対する権利義務も他の組合員と同様に有しているのであるから、年度途中で変更のあった場合でも、変更後の定款によって持分の払戻しを行うこととなる。(2) 死亡等による法定脱退者(解釈)死亡等による法定脱退の場合は、組合員の意思にかかわらず法定された事由に該当するにいたったとき法律上の効果としてただちに脱退せざるを得ず、組合員たる地位及び権利を失うのであるから、持分の払戻しはその脱退の時点において効力を有していた定款に準拠すべきであると解する。
A.  (1),(2)とも貴見のとおりである。 (66-69)
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Q−15−(4) 出資額限度持分払戻し規定の意味
Q.  私はこのたび所属している組合を脱退することとなりました。私の所属する組合の持分払戻しに関する規定はいわゆる出資額限度の払戻しとなっていますが、いろいろ調べた結果、ここでいう「出資額限度」とは、払戻しの「下限」を出資額と定めたものであり、出資額以上の払戻しを受けることも可能のように思われますが、この解釈で間違いないでしょうか。
A.  組合の脱退者に対する持分の払戻しに関して中小企業等協同組合法では、第20条第1項において、「組合員は、脱退したときは、定款の定めるところによりその持分の全部又は一部の払戻しを請求することができる。」と定められています。貴見の解釈は、昭和46年1月6日付け45企庁第2084号中小企業庁指導部長通達を類推されたものと思われますので、以下に本通達の要旨を示します。
 「一 持分の払戻しの際の組合財産は時価による。  二 この場合において、組合の実態にかんがみ、定款で持分の一部の払戻しを定めることができる。なお、払戻しの額の下限は出資額とし、定款において、それを上廻る額を適宜定めることは差支えない。」
この通達の主旨は、組合が持分の一部の払戻しを定める場合、最低でも個々の組合員が拠出した出資額は払戻されるべきであるとの考え方から、出資額を下廻って払戻す規定を設けることは許されないということを述べています。つまり、組合員は出資額までは持分を保障されているという意味です。(除名による場合、組合財産が出資総額より減少した場合はこの限りでない。)ところで、貴組合の定款規定は出資額限度払戻しの規定とのことですが、この規定は、組合員の権利として払戻してもらうべき持分として、出資額が最低保障されているものです。しかし、出資額限度は、持分の一部について払戻す方法の一つですから、出資額以上払戻すことができるという意味のものではありません。 (89-4-1)
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Q−15−(5) 加算式持分算定方法について
Q.  中小企業庁の模範定款例に、加算式持分算定方法の規定が追加されましたが、従来の改算式持分算定方法との違いについてご教示下さい。
A.  持分の算定方法は、法に何らの規定がないので、定款で自由に定めてよいわけですが、一般にその方法として改算式(または均等式)算定方法と加算式(または差等式)算定方法があります。 改算式算定方法は、組合の正味財産(時価)の価額を出資総口数で除することにより出資1口当たりの持分額を算定し、それに各組合員それぞれの出資口数を乗じて各組合員の有する持分額を算定する方法です。
この方法によるときは、出資1口当たりの持分額が均等となるので、計算、事務処理が簡便ですが、原始加入者および増口分の出資の払込みに際しては、持分調整金を徴収する必要が生じます。現在殆どの組合がこの方法を採用しています。
加算式算定方法は、各組合員について、事業年度ごとに、組合の正味財産(時価)に属する出資金、準備金、積立金その他の財産について、各組合員の出資口数、事業の利用分量(企業組合にあっては従事分量)を標準として算定加算(損失が生じた場合はそのてん補額を控除)することによって、各組合員の有する持分額を算定する方法です。 この方法によるときは、各組合員の持分は、加入の時期、組合事業の利用分量等により不均一となるので、計算・事務処理が繁雑となります(持分計算を明らかにするための持分計算表と、各組合員別に持分額を示す持分台帳が必要となります。ただし、最近は電算機の普及により機械処理が可能となっています。)が、持分調整の問題を生じないし、また、組合員の組合に対する権利義務の表示について忠実であると言えます。 このように、この2つの方法にはそれぞれ特徴があり、組合の実情に応じて適宜選択する必要があります。このため、模範定款例に、平成3年6月12日の改正により、従来の改算式算定方法に加えて、これまで明確に示されていなかった加算式算定方法の規定が次のとおり追加されています。○定款例第23条組合員の持分は、次の基準により算定する。

一 出資金については、各組合員の出資額により算定する。
二 資本準備金については、各組合員の出資額により事業年度末ごとに算定加算する。
三 法定利益準備金、特別積立金及びその他の積立金については、各組合員が本組合の事業を利用した分量に応じて、事業年度末ごとに算定加算する。
四 繰越利益又は繰越損失については、各組合員の出資額により算定する。
五 土地等の評価損益については、各組合員の出資額により事業年度末ごとに算定し加算又は減算する。
2準備金又は積立金により損失のてん補をしたときは、その損失をてん補した科目の金額において有する各組合員の持分の割合に応じてそのてん補分を算定し、その持分を減算する。第53条第2項ただし書の規定又は総会の決議により、特別積立金又はその他の積立金を損失のてん補以外の支出に充てた場合も同様である。
3本組合の財産が、出資額より減少したときの持分は、各組合員の出資額により算定する。
4持分の算定に当っては、何円未満のは数は切り捨てるものとする。 (注書は略) (93-1)
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Q−15−(6) 加算式持分算定方法への変更について
Q.  私ども事業協同組合では、これまで改算式持分算定方法を採用していましたが、このたび加算式持分算定方法に変更したいと考えております。その場合、どのような点に留意すべきかご教示下さい。
A.  (1)加算式持分算定方法の採用の意義 加算式持分算定方法は、従来から改算式持分算定方法を採用している資産保有組合において、
(1)土地等の含み資産または内部留保が大きいため、持分調整金としての加入金の額が増大し、その結果新規加入が阻害されるような場合、あるいは、
(2)組合への加入年数(組合員歴)や事業利用による貢献を持分に反映させようとする場合に適する持分算定方法であることに、まず留意する必要があります。
 したがって、加算式持分算定方法は、持分の払戻し方法が、全額払戻しまたは多額の一部払戻し方法(帳簿価格以上の額を限度とする払戻し方法)である場合に意味があり、少額の一部払戻し方法(例えば、出資額限度方式や、出資額以上であるが帳簿価格に満たない額を限度とする払戻し方法)である場合には、採用の意味は少ないと考えられます。
 また、持分の払戻し方法が一部払戻しの場合で、加算式持分算定方法を採用する場合には、定款に規定される、持分の算定の内容と持分の一部払戻しの内容とは当然異なることになります(持分計算額よりも一部払戻し額の方が少ない)ので、持分の払戻しの際、組合員に誤解をされないよう注意を要します。
(2)加算式持分算定方法の採用の手続
 まず、既存組合の加算式持分算定方法の採用の決定は、通常の定款変更の議決方法(特別議決)で足りるものと解されます。
 改算式から加算式に持分算定方法を変更する組合においては、加算式方法採用時の既存組合員の持分は、各持分構成資産について各組合員の出資額により算定することとなります。
(3)組合財産の評価組合財産のうち、帳簿価額と時価が異なる資産については、時価(一括譲渡価額)評価する必要があります。その評価方法は、(1)対象となる資産ごとに明確に定めておくこと、(2) 客観性があり、かつ、計算が容易であることが必要です。
組合財産の評価に大きく影響する土地の評価方法は、様々な方法が考えられますが、一般に妥当と思われる方法としては次のものがあげられます。
ア.固定資産税評価額倍率方式
 通常の固定資産評価額を時価の○○%程度とみて、固定資産税評価額を○○%で除して時価に評価還元する方法。
イ.相続税評価額倍率方式
 通常の相続税評価額を時価の○○%程度とみて、相続税評価額を○○%で除して時価に評価還元する方法。
ウ.不動産鑑定士による評価方式
 不動産鑑定士にその評価を依頼する方法。この場合は、1人の鑑定士のみによる評価では不十分であり、通常5人の鑑定士に依頼し、これらの評価額のうち最高値と最低値を切捨て、中三値の平均値をとる方法が適当です。
 なお、含み資産の評価方法については、規約かまたは総会の議決によって定めておくことが必要です。 (93-2)
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