組合特別税制のポイント
組合特別税制
 中小企業の組合である中小企業等協同組合、商工組合、協業組合、商店街振興組合、生活衛生同業組合等に対しては、会社に対する場合と違って、税制上の優遇措置がとられています。
 しかし、これらの組合でもその種類、内容の違いにより課税上の取り扱いが異なっています。
■組合と普通法人の税制上の対比


協同組合等 (本文参照) 企業組合 協業組合 普通法人
(株式会社
 有限会社等)





各事業年度の所得 ……………… 18%
清算所得 ……………… 20.5%
出資金1億円以下
・所得金額:年800万円以下の部分
・所得金額:年800万円超の部分
 18%
 30%
出資金1億円超 …………………… 30%
清算所得 ……………………………

27.1%


   
  
同左



出資配当(出資の1割を限度)
      ……配当所得(要源泉徴収)
利用分量配当:損金算入(別表4で減算)
配当を受けた組合員は、「受取配当金の
益金不算入」の適用ができない。
☆企業組合
○出資配当(出資の2割を限度)
      ……配当所得(要源泉徴収)
○従事分量配当……損金算入はできない
     (配当所得として要源泉徴収)
☆協業組合
○原則として出資配当(限度なし)
      配当所得(要源泉徴収)
   ただし、定款に別に定めたときには
出資配当以外の方法も可能
  …損金算入はできない
例1) 協業組合との取引の
分量に応じてする配当
例2) 協業組合に従事した
分量に応じてする配当
株式会社
株式比例による配当
(出資比例)
 …配当所得
(要源泉徴収)





所得のうち年400万円以下の金額  5.0%
所得のうち年400万円を超える金額

及び清算所得の金額…………………

6.6%
所得のうち年400万円以下の金額  5.0%
所得のうち年400万円超
800万円以下の金額…… 7.3%
所得のうち年800万円超の金額
及び清算所得の金額…… 9.6%
同左




定款・出資証券・受領書(組合員に発行
するもの及び組合員が組合に発行する受
領書)については非課税。(員外者に対
する取引は通常どおり3万円以上のもの
について課税)
[その他、信用協同組合等について特例
あり]……………………印紙税法別表第1
同左 ただし左記[ ]内はなし 左記に係わる特例なし




協同組合の設立、代表理事の変更、その
他中小企業等協同組合法など、当該組合
の根拠法に基づく登記については非課税。
………登録免許税別表第1第24号
同左 左記に係わる特例なし

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法人税法上の法人の種類
 法人の所得に対して課税する法人税法においては、法人の種類により@公共法人A公益法人等B普通法人C協同組合等D人格のない社団等の5つに分けられ、その法人の性格から課税内容が異なっています。
■法人税上の法人の種類
公共法人
地方公共団体及び日本育英会、NHKなど公共性の著しい事業を行う法人。
公共性が大であるため納税義務なし。

公益法人等
宗教、社会教育、その他公共の利益を目的とし、原則として営利を目的としない法人。社会福祉法人、宗教法人、日本赤十字社、学校法人、社団法人、財団法人等。
原則→公共性が大であるため、納税義務なし。
例外→収益事業を営む場合は納税義務あり。

普通法人
通常の営利を目的とする法人。株式会社、有限会社、医療法人など。
すべて納税義務あり。

協同組合等
事業者、農民、消費者などの各自の生活または事業改善のために共同事業を行う組織。
事業協同組合、農業協同組合、信用金庫、消費生活協同組合など。
(税率の軽減等特別措置はあるが)すべて納税義務あり。

人格のない社団等
法人格のない団体で代表者又は管理人の定めのあるもの。PTA、学会、町内会など。
原則→(通常、収益事業を営まないため)納税義務なし。
例外→収益事業を営む場合は納税義務あり。
組合については、
非出資の商工組合及び生活衛生同業組合は「公益法人等」として扱い収益事業以外の所得は非課税。
事業協同組合、事業協同小組合、火災共済協同組合、信用協同組合、出資商工組合、商店街振興組合、出資生活衛生同業組合、 生活衛生同業小組合を「協同組合等」として、税率の軽減等の特別措置を講じています。
企業組合と協業組合については、いくつかの優遇措置の対象となるものの基本的には会社等と同様に「普通法人」として扱っています。

 組合に関する特別税制は主として前述の「協同組合等」に関するもので、以下説明するものは、特にその旨のことわりのあるものを除き、企業組合と協業組合には適用されません。

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利用分量配当の損金算入(法人税法60条の2)
 組合の事業を利用した分量に応じて行う事業分量配当は、損金に算入されます。
 利用分量配当の損金算入が認められるのは、組合の剰余金が主として組合員の組合事業の利用によって生じるものであり、いわば利用料、手数料のとり過ぎた結果生じるもので、実態は一種の割戻し、値引きに相
当するものですから、形式的には剰余金の処分であっても、損金算入を認めているのです。

■要件・留意事項
組合決算にあたっては、剰余金処分案に計上して、総会の承認を受けること。
対象となる剰余金は、組合員が組合事業を利用して生じた剰余金に限られ、不動産の売却益や組合員の利用がないと認められる事業(自営事業)から生じた剰余金は対象とはなりません。
適用を受けるには組合員との取引によって生じた剰余金とそうでない剰余金と区分する必要があります。
分配の基準となる組合員の事業利用高は、当期の利用高に限られ、当期前のものは含まれません。
組合は利用分量の支払いにあたって、源泉所得税を徴収する必要はなく、損金算入の取り扱いを受けた部分は、支払いを受けた法人組合員の側では益金に算入しなければならず(個人事業所の組合員の場合は事業所得の収入金額)、受取配当金の益金不算入の対象とはなりません。

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賦課金の仮受金経理(法人税基本通達 14-2-9)
 教育・指導事業に充てるために賦課した賦課金について、当該事業が翌事業年度に繰り越されたため、剰余が生じた場合には、これを翌年度の経費に充当するため仮受金等として経理し、益金に算入しないことが
できます。
 教育事業や指導事業は通常の場合、組合員からの賦課金によって行っています。
 この事業が賦課金を徴収した事業年度に実施されれば、課税関係は発生しないが事業の企画の都合上、翌事業年度に実施が持ち越される場合、賦課金を徴収した事業年度に剰余金が生じることになります。
 しかし、この剰余金が益金として課税されると、租税として支払った額を控除した残額しか目的の教育・指導等の事業に充てられず、それらの事業が円滑に遂行できなくなってしまうことへの配慮から認められて
いるものです。

■要件・留意事項
仮受の対象となる賦課金は教育・指導事業に充てるものに限られる。
一般管理費など共通費として徴収する賦課金については、たとえそのなかに教育・指導事業に係わるものが含まれていても仮受けの対象とはなりませんが、これを教育・指導事業に配賦すれば認められます。
賦課金の収入・支出について教育指導事業とそれ以外の事業の賦課金とを混同しないよう、帳簿上で明確にしておくことが必要です。たとえば、共同経済事業の収入で、あるいは他の事業の賦課金を指導・教育事業に充当したために指導・教育事業の賦課金が余っても仮受けの対象とはなりません。本制度の適用を受けるには、事業別収支予算と事業別損益計算制度を採用するのが適切です。
これらの賦課金を組合員から徴収する場合、組合員が納付に際してこれを区分する必要はなく、組合が収支予算で区分していれば結構です。
賦課金の仮受経理は賦課金の剰余を翌期の指導・教育事業の経費に充当する場合にのみ認められるものですから、翌期の賦課金については、当期に徴収した賦課金の剰余を差し引いて徴収する必要があります。

■賦課金の仮受金経理 仕訳例
(1) 協同組合が賦課金を収入したとき
(借方)現金・預金 ×××   (貸方)教育情報事業賦課金収入 ×××
(2) 教育・指導事業の経費を支出したとき
教育情報事業費 ×××   現金・預金 ×××
(3) 期末において事業の一部が繰越しとなり、当該剰余金を仮受経理するとき
方法1 仮受賦課金繰入 ×××   仮受賦課金 ×××
方法2 教育情報事業賦課金収入 ×××   仮受金 ×××
(4) 翌期において繰越しの教育・指導事業の経費を支出したとき
方法1 教育情報事業費諸経費 ×××   現金・預金
    仮受賦課金 ×××   仮受賦課金戻入 ×××
方法2 仮受金 ×××   現金・預金 ×××

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留保所得の特別控除(租税特別措置法第61条)
 自己資本の充実を図る目的で、税務上の利益積立金額が出資の4分の1に達するまで、その年度において留保した金額の32%相当額を控除できます。ただし、出資金が1億円を超える組合では、累積留保額の区分に
基づき、控除率は引き下げらます。
■要件・留保事項
*適用を受ける組合 
事業協同組合、事業協同小組合、協同組合連合会、出資商工組合・同連合会、出資生活衛生同業組合・同連合会(火災共済協同組合、信用協同組合、企業組合、協業組合、商店街振興組合等は対象外) 員外利用が
20%以内であること。
 この特別控除の損金算入は、損金経理は要件ではなく、申告調整によって別表十(三)で計算し、その控除額を別表四の減算欄に記入して行う。申告書別表四は簡易様式以外のものを使用すること。
 特別控除を適用した留保金額を、3年以内に配当、益金処分の賞与として取り崩したときは、古い年度の留保金より益金として算入されます。

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加入金の益金不算入
 持分調整としての加入金は資本等取引に該当し、益金に算入されません。
 この加入金の益金不算入は、企業組合・協業組合を含め、出資されている全ての組合に適用されます。ただし、権利金的な内容を持つ加入金は含まれません。

その他の特例
 別表の「組合と普通法人の税制上の対比」掲載のほか、次のようなものがあります。
■留保所得の控除率(出資金1億円を超える組合の場合)
累積留保額 控除率
 2,500万円以下 32%
 2,500万円超1億円以下 20%
 1億円超2億円以下 14%
 2億円超 10%

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固定資産税
事務所及び倉庫(敷地を除く)
(地方税法第348条4項)・・・非課税
協業組合にも適用。信用協同組合及び同連合会については、事務所及び倉庫に対する非課税措置は廃止され、課税標準が価格の2分の1とされました。
独立行政法人中小企業基盤整備機構法により資金の貸付を受けて取得した1台・1基の取得価額が330万円以上で、共同利用に供する機械及び装置の課税標準は、3年間取得価額の2分の1。
(地方税法第349条の3、4項。同令52条の2の2、同規則11条)
協業組合にも適用。(事業協同組合小組合、企業組合、商工組合連合会、商店街振興組合・同連合会、生活衛生同業小組合、 生活衛生同業組合・同連合会は対象外)
そのほか、独立行政法人中小企業基盤整備機構法により都道府県又は同機構から資金の貸付又は譲渡を受けた一定の施設等に対する不動産取得税の特例などがあります。

■参考資料
「中小企業組合関係税制のあらまし」(財団法人・中小企業情報化促進協会)
「中小企業組合必須〜総務・会計・税務の実務」(全国中小企業団体中央会)
「協同組合の会計と税務」(ナニワ監査法人)

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Last updated on Thu, Aug 19, 2010