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 民事再生法に係るQ&A
Q.1.民事再生法の手続きと銀行取引停止処分との関係
Q.2.債権者の民事再生手続の申立には、債務者の合意を必要とするか
Q.3.民事再生法が適用された場合、金融機関からの融資は困難となるか
Q.4.民事再生法の申立原因について
Q.5.民事再生法は債権者にとってどんなメリットがあるか
Q.6.債務者(経営者)の違法行為と責任追及
Q.7.担保権者に「不当な損害を及ぼすおそれ」とは、どんな場合をいうのか
Q.8.競売手続の中止における「相当な期間」とは
Q.9.民事再生法申請のために必要な費用等
Q.10. 債務者のモラルハザートをめぐる諸問題


Q.1. 民事再生法の手続きと銀行取引停止処分との関係
A. 2回以上の不渡事故を出すと、銀行取引が停止される。民事再生法は、その申立原因として @破産原因事実が生じるおそれのあること A事業継続に著しい支障をきたすことなく弁済期にある債務を弁済することができないことをあげています。銀行取引停止処分の場合は、この@Aのいずれにも該当します。又、手形等の不渡事故が一回発生した場合でも@Aに該当する場合も考えられます。

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Q.2. 債権者の民事再生手続の申立には、債務者の合意を必要とするか
A. 債権者は、債務者に破産の原因である事実の生ずるおそれがあるときに民事再生手続の申立ができる。(法§21.U) この場合、債務の合意を必要としない。
会社更生、会社整理手続は、資本の10分の1以上にあたる債権を有する債権者に申立権を認めているが、民事再生法は、こうした制限を設けなかった。

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Q.3. 民事再生法が適用された場合、金融機関からの融資は困難となるか
A. 困難である。民事再生法に限らず、全ての集団的整理手続に共通する問題であるが、事業体が非健全となったため申立をするわけだから、金融機関が警戒するのは当然でしょう。再生計画案の早期作成、早期かつ完全な実施が、金融機関及び取引先の信頼を得るために必要と思われる。

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Q.4. 民事再生法の申立原因について
A. 民事再生法の申立原因は、Q.1 で回答したように、@破産の原因たる事実の生ずるおそれのあるとき A事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき とされている。このうち、@の破産の原因たる事実というのは、支払不能または、支払停止であり、法人については、債務超過です。そして、「生ずるおそれがあるとき」は、具体的にケースバイケースで判断する外はないが、支払不能が確実であることまでは要せず、客観的にみて近い将来、支払不能になる可能性が高いことをもって足りると考えられます。又、Aの要件は、会社更生法(§30T)と同一の要件であり、流動資金が不足し、これを調達して弁済期にある債務を弁済しようとすれば、必然的に債務者の事業の継続に重大な支障が生じることをいうものと解されています。

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Q.5. 民事再生法は債権者にとってどんなメリットがあるか
A.
@ 従来の和議法が廃止され、再建型の基本法として、民事再生法が制定されたこと
A 和議法下での再建の問題となった次の論点が改善された
否認権制度の導入 ― 倒産直前の特定債権者のみに対する不平等弁済の効力が否定される。
債権の届出・調査・確定制度 ― 和議法下では、和議計画が認可されても、それが履行されることは少なかったが、再生債権者表に記載が認められた債権については、確定判決と同一の効力を有し、強制執行できる。
債権者に対し、記録の謄写閲覧制度が設けられた。
担保権者に対する制限 ― 従来、会社再建を図っても、担保権者が競売を実行すれば、再建が不可能となるケースが多くあったが、再生法では、競売の一時中止の外、担保権消滅請求制度が導入されることにより、再建を考える債務者、一般債権者にとって、有利に機能し得る。

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Q.6. 債務者(経営者)の違法行為と責任追及
A. この制度がどのように運用されるかは、今後の実務をみないとなんともいえない。しかし、再生法は、143条以下で損害賠償請求権の査定を、142条で役員の財産に対する保全処分を定めており、いずれも、役員の責任追及を迅速かつ実効性を担保する制度を設けており、その追及は、債務者、管財人、管財人が定められていないときは債権者の外裁判所が職権で行えるとされていること鑑みると、今後、責任追及のケースが増大するものと思われる。

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Q.7. 担保権者に「不当な損害を及ぼすおそれ」とは、どんな場合をいうのか
A. 抽象的には、再生手続の遂行上、競売申立人が、社会通念に照らして受忍すべき犠牲の程度を超えているか否かで判断されるべきであるが、具体的には、再生計画の遂行のための、当該競売目的物の必要性、中止期間の長短、他の担保権者の動向などを総合的に考慮して決定される。

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Q.8. 競売手続の中止における「相当な期間」とは
A. 「相当な期間」については、この競売手続中止命令が、何時でも(手続開始決定の前後を問わず)発せられることから、再生手続にとって必要と裁判所が判断する期間とされよう。他方、民事再生法は、担保権消滅制度(法 §148以下)をとっていることから考え合わせると、債務者側としては、当該担保物権の必要性と、担保権者に対する担保権消減のための交渉の有無、必要とされる期間、担保権者の意向等を踏まえて決定されるものと思われる。

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Q.9. 民事再生法申請のために必要な費用等
A. 予納金・弁護士費用
負債総額 予納金 弁護士費用
5000万円未満 200万円 200万円
5000万円〜1億円未満 300万円 300万円
1億円〜10億円未満 500万円 700万円
10億円〜50億円未満 600万円 1500万円
50億円〜100億円未満 700〜800万円 2000万円
100億円〜250億円未満 900〜1000万円 2500万円
250億円〜500億円未満 1000〜1100万円 3000万円
500億円〜1000億円未満 1200〜1300万円 3500万円
1000億円〜 1300万円以上 4000万円
※ 費用としては他に、印紙代、郵便切手等の実費として、5万円程度がいります。弁護士費用については、弁護士会の報酬基準が制定されていませんので、他の基準を考慮して私案として示します。

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Q.10. 債務者のモラルハザートをめぐる諸問題
A. 債務者が、自己の経営責任を放置して、安易に民事再生法の申立をなし、債権者の犠牲において、経営を再生させるのは、「モラル・ハザート」ではないかと、批判する意見も多数あります。このような債務者による無責任な再生申立を防止又はチェックする制度として、民事再生法は、次の制度を定めています。
@ 情報の開示 (§17 §18 §125)
債権者への情報の開示が整備されましたので、記録の閲覧、謄写、再生債務者の報告書作成、提出義務が課されました。
A 債権者委員会(§118)の設置、同委員会、代理委員(§90)の導入による手続への一定の関与が認められています。
B 再生債権者の各種申立権
・ 再生手続開始の申立権(§21)
・ 監督命令の申立権(§54 §62 §64 §79)
・ 債権者集会の招集申立権(§114)
・ 否認権に関する申立権(§56)
・ 役員の責任に基づく損害賠償査定申立権(§143)
・ 再生計画の作成、提出権(§163)
・ 再生原因のない場合の手続廃止申立権(§192)
・ 再生計画の取消申立権(§189)
C 再生計画の履行確保 ― 不履行の制裁(§180 §185)

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Last updated on 2000.6.6