平成15年度戦略的情報化モデル事業事例
1 採択テーマ
 3次元CAD及びCAMによるNCプログラムの自動作成
2 事業実施者の概要
名 称 CAD/CAMフォーラム
所在地萩市大字東浜崎11−10
代表者楠牟礼正次
営む主な事業
資本金
従業員又は構成員数6社
3 事業実施前の問題点
 県内の中小機械製造業者に於いても1,000万円〜5,000万円もする高価なNC工作機械が多数設置されているが、作業者自身がNCプログラムの作成や機械の段取りをするために多くの時間を必要としており、NC工作機械による正味の加工時間は全作業時間の約1/2と効率が低い。 また、新規採用の作業者には長期間のNCプログラム作成のための教育が必要と同時に、不慣れなため誤作の発生率も高い。 これらの改善は中小企業が生き抜くため必須であるが、現場技術であるため改善が進まない状況である。
4 事業で目指したもの
 本研究会では本部に先端的なCAD/CAMのホストを設置し、本研究会の参加企業各社がインターネットなどを通じ、遠隔操作でNCプログラムを作成できるシステムを調査研究する。
 NCプログラム作成業務を専門化すれば、作成数の増加、類似プログラム作成の頻度の増大や熟練(慣れ)により作成時間の短縮、誤作が削減でき、正味加工時間の割合を大きく向上させることが期待される。
 さらに同装置で作成したNCプログラムを会員以外の中小機械製造業者にインターネットを通じて販売(提供)するための機構と技術開発についての調査研究を行い、効果を広く行き亘るように新規事業展開を目指す。

CAD/CAMフォーラム殿システムイメージ1

5 経営課題等の解決に向けた取組事項、その手順及び期間
  1. 最適CAD/CAMシステムの選定 (平成15年7月〜平成16年2月)
  2. 参加企業に設置されているNC工作機械や制御装置の調査 (平成15年9月〜平成15年12月)
  3. 遠隔操作のできる環境整備の調査・実験 (平成15年10月〜平成16年1月中旬)
  4. 企業が有する製造品の図面の入力とコンピュータ図面作成の検討 (平成16年3月)
6 事業実施の経過、その経過途中で生じた問題及び対応
 委員会を設置し、1ヶ月1回の割合で委員会を開催し事業を進めていった。  第1回目の委員会では事業の概要説明、意思の統一と今後の方針を自由意見により検討した。
 第2回目からは下記の項目について検討した。
1. 当面の目標の設定
 NC工作機械は多種類の工作機械(切削加工、プレス、放電加工等)で使用されているが、中小企業において使用台数が多く、かつ複雑なプログラムを必要とし、大きな市場が期待できるマシニングセンターフライス盤に応用できるミーリング加工を当初のターゲットにし、その中でも特に使用工具の種類も多く、プログラム作成に多大な時間を要し稼働率の低い2.5次元加工を目標にした。
2. CAD/CAMシステムの選定
 当事業の中心となる設備、CAD/CAMシステムの機能説明と実演を7社(WinMAX, ESPIIT, SURFCAM, MasterCAM, φSTATION-E, GOELAN, Virtual Gibbs)から受けた。 これと並行して、現状を踏まえたNCプログラムの利用条件の整理に関する検討も行った。
 紙図面の取扱い、ミーリング加工のなかでも初期対象機種、参加企業の所有する工作機械と制御装置での実験可能機種を調査した。
 紙図面では、その内容をコンピュータ上に移転する必要があり、ここでの時間浪費が多く、誤りの発生率も高いので、スキャナーによる反自動図面取り込みも検討した。
 さらに、プログラム販売先の受け入れ環境整備と利用者との責任分担なども検討した。
 CAD/CAMシステムの選定には慎重を期すため4回の委員会で検討した。
 その結果、第1次選考としてSURFCAMとGOELANに絞り、実験結果もふまえ、希望事項を仕様書にまとめ、ネットワークシステム構築の可能性と価格に関する回答を得、委員会で基本的な使用システムをGOELANに決定した。
 この作業と平行して委員がネットワークを利用して、CAD/CAMシステムを利用できる通信の実験(情報伝達精度と伝達速度)を行い、この可能性を確認した。
 通信は山口ネットワークと三和工機との間で行い精度と伝達速度(ADSL利用で下り2Mb)を確認した。
 その他、初期の実験対象になる会員企業の所有するNC工作機械や制御装置についてアンケート調査結果をもとに、事業の方向性を決定した。
3. システム導入後の作業
 平成16年3月8日にシステムを導入し、3月19,20,21日の3日間に亘り、参加企業のオペレターを養成するため、システム使用法の講習会を開催した。
4. 新会社設立
 平成16年3月20日の委員会で当事業の今後の継続的な発展をについて検討し会員企業6社で新会社を設立する方針が出た。

7 事業実施によって得られた効果
 本年度事業では、参加各企業がネットワークを通じて最先端のCAD/CAMシステムを利用し、自社のNCプログラムを作成できる基盤ができた。  これにより、自社の合理化は勿論のこと、各企業が営業所となりNCプログラム販売の拠点になる基礎技術の確保もできた。
 また、委員会形式で互いに協力し、1つの目的(事業)に取り組んだことにより、企業間の信頼性が増し、情報交換がスムーズになりグループ活動の副次的(副産物的)な効果も得られた。

CAD/CAMフォーラム殿システムイメージ2

8 事業実施者における今後の課題と予定している取組内容
 NCプログラムを会員以外の企業に販売する事業は、営業経費の分担方法や販売価格が決定できず、緊急的な課題として残った。 これらの解決には、NCプログラム作成に熟知してから、最終的に決定したいと考えている。 また、販売に関する信頼性を確保するために、事業独自の新会社設立も検討中である。
9 他の中小企業者等に対する助言等
 各参加企業とも、本事業の研究内容の類似作業を日々行っていたが、事業化するとなると、販売方法や価格など種々の検討項目が発生して来るので思ったより時間と労力がかかった。
 特に中小機械製造業者が販売までを行うには、市場確保など未経験の分野が含まれてくるため、計画段階であっても充分な準備をする必要を強く感じた。
10 事業に対するお問い合わせ
【 事業者名 】CAD/CAMフォーラム
【 担 当 者 】株式会社サン精機  代表取締役 楠牟礼正次
【 電話番号 】0838−22−7677

語句説明
 
CAD(Computer Aided Design) →
コンピュータ援用設計
CAM(Computer Aided Manufacturing) →
コンピュータ援用生産
NC工作機械(numerically controlld machine tool) →
数値制御工作機械
マシニングセンター →
数値制御複合工作機械
フライス盤 →
円筒の外周又は、端面に切刃を付けた、車型の刃物を回転させて工作物を削る刃物をフライスといい、このフライスを主軸に取り付けて回転させ、工作物を切削する工作機械
ミーリング加工 →
回転工具(フライスカッターエンドミル等)により品物の平面・曲面部を加工する。転削ともいう。

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Last updated on Sun, Aug 1, 2004