組合質疑応答集
 Q−20組合員の責任・権利・義務に関する質疑
Q−20−(1)組合員の責任の限度について
Q. 中協法第10条第4項によれば、「組合員の責任はその出資を限度とする」とあり、また法第20条第3項によれば「組合の財産をもってその債務を完済するに足りないときは、組合は定款の定めるところにより、脱退した組合員に対し、その負担に帰すべき損失額の払込を請求することができる」とある。この条文のうちその負担に以降の部分は「未払出資金があればこれを請求し得る」という解釈と「その負担に帰すべき」という言句により、前述の解釈を拡大して「組合員の責任は出資額を限度とする」という第10条第4項の規定を無視する解釈が成り立つことも考えられるがどうか?
 また一例として出資金50万円、諸積立金20万円の組合が共販事業の失敗により欠損金100万円を生じた。積立金をとりくずし残額80万円を組合員が特別賦課金をもって補てんする決議を行ったが、一部組合員は出資金をもってそれに充当させ、脱退することを申し入れた。
 この場合組合の財産をもって債務を完済し得ない30万円について脱退組合員に請求できないか?なおこの欠損金は数年にわたり、累積され既に先の総会に於て承認を受けているものであり、その再建をはかるため特別賦課金の徴収を決議されたものである。
A.  中協法第20条第3項にいう「その負担に帰すべき損失額の払込云々」の条項は脱退者の持分の払戻に関し規定されたものであって、法第10条第4項の規定により、組合員は明らかに有限責任であるから、当然、「組合の未払込出資金があり、かつ欠損を生じている場合においては、未払込出資金額を限度としてその負担に帰すべき損失金額の払込を請求することが出来る」と解すべきである。勿論、定款に損失額払込の規定を設けない場合には、請求権がないことは法の規定からして明白である。
  よって貴見第2の解釈の如く「その負担に帰すべき云々」のみを抽出してこの語句を拡張解釈することは妥当でないと解する。
 なお、本規定は、無限責任の場合の規定であって、有限責任の場合の規定ではないとの見解もあるが、一応これは立法論として別に論ぜられるべき問題であると思う。
 例題の場合の、総会で議決された組合の欠損金補てんについては、当該組合員が、特別賦課金をもってこれに当てることを承認したものでなければこれを請求することはできないものと解する。すなわち、法はその第10条第4項において「組合員の責任はその出資額を限度とする」と定めているので、出資額を上回る経費の分担とか、損失金の負担とか法第10条第4項との関係を検討してみると、まず、法は「出資額」を限度とするものである旨を規定しているのであるから、組合員が組合に対して負う財産上の出捐義務は、その額において有限であり、組合員がその額を超えて、財産上の出捐義務を負担することがないことは明らかである。また、その限度である出資額というのは組合員が出資を引受けた額、即ち加入する際に引受けた額のままであることもあろうし、加入後に他の組合員の持分を譲り受けることもあるだろうが、要するに組合員がみずからの意思で引き受けた出資の額と解するのが相当であろうと思う。
 総会の決議又は定款の変更によって出資1口の金額の増加とか、出資額を上回る経費又は損失金について任意に賦課せしめることが出来るとすれば、法律上は、際限なく組合員の負担を加重させることが可能となり、組合員の責任には何ら「限度」が存在しないこととなって、法が第10条第4項に定めた「その額をもって組合員の財産上の出捐義務の限度である」旨の規定は無意味なものとならざるを得ない。
 法第10条第4項の存在を無意味なものとして否定しない以上、同条項は総会の決議又は定款の変更によって加重することが出来ないもの、すなわち組合員が、組合に対して引受けた出資の額を超えて財産上の出捐義務をさせられることがない旨を保障される規定と解される。
 したがって、問題は、組合が損失金を賦課することによって、組合員に「その出資額」を超えて財産上の出捐をしなければならない義務が生ずるかどうかの点にかかっているということになる。
 もし組合員に未払込があるならば、これをもって損金の補てんに当て得るので、第10条第4項は何ら関知するところでないが、もしそれを超えて出捐すべき義務が生ずるのであれば、それは同条項に抵触することとなる。してみれば、組合は法第10条第4項の規定に照らし「その出資額」を上回る経費の賦課とか損失金の負担を課することが出来ないものと解するほかないであろう。だがしかし、法第10条第4項の規定は、組合員みずからの意思によっても「その出資」を上回って負担することを禁止する趣旨を有するものとは到底考えられない。よって当該組合のすべての組合員が同意した場合でもなお負担させることが出来ないという理由はないと思われる。以上の理由により、総組合員の同意がない限り、総会の決議をもってしても、すべての組合員に「出資額を上回る損失金額」を組合員の負担すべき金額として強制することは出来なく、本問の場合も当該組合員がそれを拒否し脱退するという以上、総会の決議である由をもってこれを請求することは出来ないものと解する。 (74-78)
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Q−20−(2) 組合員の権利と義務について
Q.  当協同組合では、毎年組合員対して組合に関する知識の普及・啓蒙のために講習会を開催していますが、今般の講習会は、事務局長の私が講師となり、組合員の有する権利と義務について講義することとなりました。現在、中小企業等協同組合法を勉強しながら、整理を行っているところですが、なかなかまとめきれず困惑しています。
 組合員の権利と義務にはどのようなものがあり、どのように分類することができるのかご教示下さい。
A.  組合員は、定款の組合員の資格に基づいて組合に加入するわけですが、その結果として、中小企業等協同組合法(以下、「組合法」という。)では、組合の健全な運営を確保するために組合員に対し、種々の権利を保証するとともに種々の義務を負わせています。
 まず、組合員の権利には、組合員が経済的利益を直接享受することを内容とする「自益権」と、組合員が組合の運営に関与することを内容とする「共益権」とに大きく分類することができます。
 自益権は、個々の組合員が単独で行使することができるもので、次のようなものがあります。
(1)組合事業(共同事業)利用権(組合法第9条の2)
(2)剰余金配当請求権(同第59条)
(3)残余財産分配請求権(同第69条による商法第131条の準用)
(4)持分払戻請求権(同第20条)
(5) 出資口数減少請求権(同第23条)
次に共益権には、組合員が単独で行使できる単独組合員権と、一定数の組合員が共同することにより行使できる少数組合員権があり、前者としては、
(1)議決権及び選挙権(同第11条)
(2)定款、規約、議事録、組合員名簿、決算関係書類の閲覧謄写権(同第39・40条)
(3)代表訴訟権(同第42条による商法第272条の準用)
(4)理事及び清算人の行為差止請求権(同第42条による商法第267条の準用)
(5)決議取消し、決議不存在・無効確認の訴権(同第42条による商法第247条、第252条の準用)
(6)設立無効の訴を提起する権利(同第32条による商法第428条の準用)
(7)合併無効の訴を提起する権利(同第66条による商法第104条の準用)
などがあり、また後者としては、
(1)役員改選請求権(同第41条)
(2)参事・会計主任の解任請求権(同第45条)
(3)総会招集請求権(同第47条の第2項)
(4)総会招集権(同第48条)
(5)会計帳簿等の閲覧謄写権(同第4条の2)
(6)清算人解任請求権(同第69条による商法第426条第2項の準用)などがあります。
なお以上のほか、組合員が行政庁に対して求めることのできる権利として、不服申立書(同第104条−単独組合員権)、検査請求権(同第105条−少数組合員権)があります。
組合員の義務については、
(1)出資義務(同第10条)
(2)損失額支払義務(同第20条第3項)
(3)経費分担義務(同第12条)
(4)共同事業利用義務(同第19条)
(5)団体協約遵守義務(同第9条の2第10項)
などがあります。
また、組合法では規定はありませんが、事業協同組合の模範定款例第18条に組合員の事業内容届出の義務があります。そして、これらが、組合法で保証された組合員の権利と課されている義務です。
 権利と義務は、組合運営における車の両輪ともいうべきものです。従って、いずれかが優先される(例えば、義務の履行より権利の主張を優先させる等)状況では適切な組合運営は望めません。以上に留意しながら講義すべきであろうと考えます。 (89-12)
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Q−20−(3) 組合員の対外的責任について
Q.  私は砂利採取業を営む者によって組織されている事業協同組合の組合員です。
 先日、組合の得意先であるAさんが私のところに来て組合の理事長名義で振り出された持参人払式の小切手を見せ、組合で支払いを拒絶されたので、組合員が連帯して支払ってほしい旨言われました。支払義務があるのでしょうか。
A.  組合員が組合との関係で負うべき責任については、中小企業等協同組合法第10条第5項に「組合員の責任は、その出資額を限度とする。」と規定されています。これは、組合員の責任について、無限責任ではなく組合員の出資額を限度とする有限責任である旨を明らかにしています。つまり、組合がいかなる債務を被った場合でも、組合員は組合に対して払い込んだ出資額以上の責任は負わないというものです。
 ところで、「組合員の責任」とは組合に対する責任であって、直接に組合の債権者に対してはその責任を有しないと考えられます。これは、組合は組合員を構成員とする社団ではありますが、組合員とは別個の独立した人格体として取引の当事者になりうる権利義務を有しており、その取引によって生じた債権債務関係は、組合とその取引先という当事者間にのみ存在することとなるからです。つまり、取引先である相手方は組合に対してだけ債務の履行(支払い)を請求することができ、その組合員に直接その請求をすることはできません。
 従って、貴社は組合の得意先であるAさんに支払う義務はありませんが、個人的に組合の債務保証をしている場合は、保証人としてその責任を負わなければならないことは言うまでもありません。 (89-9-1)
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Q−20−(4) 組合員の権利義務の一時停止について
Q. 組合員の意思表示に依り組合を休会でき得るか否か?
 組合員にして組合員の経済的事情から賦課金を納入することが苦しいので、暫時組合を休会したい旨の申出があるのでこれについての取扱い方を回答されたい。 
A.  組合員が組合を休会するという意味が不明であるので回答しかねるが、組合が総会又は理事会の決議により、組合員の経費負担義務を免除(この場合は、定款を変更し、とくにやむを得ないと認める場合は、経費の全部又は一部を賦課しないことがある旨を明記する必要がある)するとか、あるいは組合員が自発的に組合に対して有する権利(議決権、選挙権、配当受領権等)を行使しないということであれば、とくに問題はないものと考える。しかしながら、例えば組合が組合員に対して賦課金を免除するという条件のもとにその組合員の基本権たる議決権等を停止するというような特約をすることは許されない。 (77-79)
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Q−20−(5) 組合在籍年数により賦課金・手数料に差等を設けることについて
Q. 設立後数年は配当もなかったが、創立後10年を経た今日、業績も伸び収支もよくなり、新組合員は加入時から配当もあり、事業利用条件も有利となっているので、創立時の組合員とその後の加入組合員とで、次のように賦課金等に差等を設けることはできるか?
(1) 創立後加入組合員のみから何らかの方法で賦課金を徴収すること。
(2) 使用料及び手数料についても、上記のように差等をつけてよいか? 
A. (1) 一般に経費の賦課方法としては、組合員に一律平等に賦課するいわゆる平等割の方法や、組合員の生産高、販売高等によるいわゆる差等額の方法、あるいはこれらの方法を併用する方法等があるが、経費は組合の事業活動に必要な費用(例えば、事務所費、人件費等)として充当される組合内部における一種の公課的なものであるから、新規加入者に対してのみ賦課することは法第14条に規定する現在の組合員が加入の際に付されたよりも困難な条件を付したことになると解する。
(2) 使用料及び手数料は、組合の経済的事業の運営上必要な費用を賄うためのもの(例えば、資金貸付利子、検査のための手数料等)であって、これも新規加入者に対してのみ徴収することとすることはできない。 (78-80)
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Last updated on 2000.2.1