組合特別税制のポイント
知っておきたい税務の基本事項
損益計算と所得計算 企業会計と法人税法の違いは?
 税務申告は、決算上の公表利益に基づいて所得計算を行い、申告納税額を算出する一連の手続き。その基本は、まず法人税の課税標準(税額決定の算定基準となる課税物件の数量など。これに税率を乗じて、その税額を算出する)である課税所得を算出することにあります。
 損益計算書に書かれている組合の利益(決算利益)は、簿記の手順に従って、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準によって算定されます。
 この損益計算書で示される組合の利益は総会の承認を受けなければ確定しません。
 税法上に所得金額は、ここで算定された決算利益をもとに、課税の公平を図るため、法人税法の「別段の定め」に従って、修正して計算します。
 つまり、「別段の定め」にある益金算入、益金不算入、損金算入、損金不算入の部分をプラス(加算)したりマイナス(減算)したりして、組合の利益と所得金額(課税所得)を調整します。
■会計処理手順
会計処理手順図

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■損益計算と所得計算の違い
損益計算と所得計算の違い
益金 (「別段の定め」があるものを除き)、資産の販売、有償・無償の資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受け、その他の収益の額(資本等取引によるものを除く)
損金 (「別段の定め」のあるものを除き)売上原価、完成工原価、販売費、一般管理費、損失その他の額(資本等取引によるものを除く)(法人税法第22条2、3項)

 法人税法における所得計算の原理は、企業会計の損益計算と多くの部分で一致しており、「益金」は「収益」に、「損金」は、「費用」に相当していますが、「損益計算」は、財政状態や経営(運営)成績の正しい認識、「所得計算」は適正かつ公平な税負担というようにその計算目的が異なっているので、「別段の定め」を置いて調整します。

「別段の定め」の分類
益金不算入・・・ 組合の利益計算では収益であるが、税法では益金の額に含めないもの(利益から減算)
益金算入・・・ 収益とはならないが、税務上は益金の額に入れるもの(加算)
損金不算入項目・・・ 組合では費用・損失として経理しても、損金の額に入れないもの(加算)
損金算入項目・・・ 費用とはならないが、損金となるもの(減算)
*以上、上図「損益計算と所得計算の違い」参照

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決算調整と申告調整
 以上のように、損益計算と所得計算は異なり、課税所得を算出するために確定決算の修正が行われますが、こうした修正を「税務調整」といいます。
 この「税務調整」は、「決算調整事項」と「申告調整事項」に区分されます。
 「決算調整事項」は、税務調整を行う場合、法人の内部で計算できる項目について決算時に計上しておかないと損金として認めないようにしたものです。決算に織り込むか否かは組合の任意となります。
 「申告調整」は組合の経理にかかわらず申告書で調整するもので、さらに「任意申告調整事項」と「必須申告調整事項」に分かれます。
 調整事項は多岐にわたりますが、組合に関係のある主なものは次のようなものがあります。

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決算調整事項
1. 損金経理をしなければ損金算入されないもの等
 賦課金の仮受金経理
 減価償却資産の償却費の損金算入
 繰延資産の償却費の損金算入
 特別の事由がある場合の資産の評価損の損金算入
 使用人兼務役員の使用人賞与の損金算入
 役員退職給与の損金算入
 換地処分等、交換または特定出資の場合の圧縮記帳の損金算入
 貸倒引当金、退職給与引当金などの各種引当金の損金算入
 少額の減価償却資産及び繰延資産の一時損金算入
 一括償却資産の損金算入
 資産に係る控除対象外消費税額等の損金算入
 貸倒損失の損金算入
2. 損金経理または利益処分により積み立てれば損金算入が認められるもの
 固定資産の圧縮記帳
 国庫補助金その他の特別勘定の損金算入
 特別償却準備金の損金算入
 各種準備金の損金算入
3. 利益処分等により経理した場合は損金算入されないもの
 使用人賞与
 工事進行基準の適用

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申告調整事項
1. 任意申告調整事項
 申告書で調整した場合のみ、申告した金額の範囲内で認められる事項。その適用にあたり、確定申告書に記載することが条件となっています。
  具体的には、以下の減税事項が該当します。
  受取配当等の益金不算入
  事業分量配当等の損金算入
  留保所得の特別控除による損金算入
  所得税額等の控除
  試験研究費の額が増加した場合等の法人税額の特別控除
  電子機器利用設備を取得した場合等の法人税額の特別控除
  事業基盤強化設備を取得した場合等の法人税額の特別控除
2. 必須申告調整事項
 組合の意志に関係なく必ず調整しなければならない事項。調整しないときは、更正等の処分を受けます。
  還付金等の益金不算入
  過大役員報酬等の損金不算入
  寄付金の損金不算入
  法人税額等の損金不算入
  青色申告事業年度の欠損金等の損金算入
  交際費等の損金不算入

税額にも差が生じてきます!
 実務処理上、収益・益金の額を小さくし、費用・損金の額を大きくするのが、節税の基本といえます。税務調整事項、特に決算調整事項と任意調整事項の適用、不適用の判断が税額を大きく左右することになりま
す。
 組合はこれらの税務調整事項をよく理解し、常に組合の現状と照らし合わせていく必要があります。そうした努力が税金を節約することにもつながっていきます。
 そして、もう1つ見落としてはならないのが、組合に関する特別税制の扱いです。

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Last updated on 2010.8.19