法律問答集
 管 理(その他)
〔組合に関する時効〕
1、 一般に時効の問題は多様かつ複雑で事務上でもよく紛争になります。
 従って、この問題は1、2回分の論述では到底解き明かせるものではありませんから、以後徐々にお話するとして今回は組合に関する問題を2点ばかり検討してみます。
 まず、組合の業務に関する行為により生じた債権が例えば売買代金債権である場合には消滅時効は何年でしょうか。
 ところで、民法173条1号は「生産者、卸売商人及び小売商人が売却した代金は2年の消滅時効にかかる」としています。
 そこで、前述の組合の代金債権にこの2年の消滅時効の適用があるかという問題です。
 実際には、裁判所の判例は協同組合は同条にいう生産者や卸売商人または小売商人のいずれにも当たらないことを理由にして同条の適用を否定しています。
 組合の有する売買代金は2年では時効消滅しないというわけです。
 では何年かといいますと、後述しますように原則としては10年とすべきでしょう。
 2年ではないというのは最高裁判所を始めとして裁判所の一貫した見解ですが、近時2年だとする下級審の裁判例が出てきたり、またそのように解する有力説もあり、さらに社会の取引通念が組合というものにも一般商人に近いような地位と責任を与えてゆく傾向になりつつあることを考えますと、いずれは協同組合にも同条が適用されるようになるのではないかと思いますが、今のところは前述のとおりです。
2、 次に、商法522条は「商行為によって生じた債権は5年で時効消滅する」としていますが、では協同組合の有する債権が本条に該当するかということが問題になります。
 結論から言いますと、第1項で述べましたように協同組合は商人ではありませんし、また協同組合が業務のためにした行為は商行為でもありませんから当然に商法の規定が適用されるものではなく、結局組合が取得した債権には商法522条の商事時効の規定は原則として適用されないと解することが従来の判例上の結論であるといえるでしょう。
 ただし、この場合、協同組合が取引をした相手方にとってそれが商行為となる行為については、商法3条1項により当事者双方に商法が適用されることになっていますから、その結果、協同組合が取得した債権につき商法522条が適用されることがあります。
例えば、信用協同組合が商人たる組合員に対して行った貸付金債権について、判例は商法503条、3条1項により同法522条が適用されその消滅時効は5年だとしています。
逆に、その組合員が商人でなければその貸付は一般民事債権として10年ですし、また組合員以外の第三者と取引したとしてその者が商人であれば商事債権として5年となります。
(平成元年12月 39号掲載)
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